企画営業 パッケージ用途印刷資材 長田 誠
マテリアル領域 高機能マテリアルズ事業本部 感光材営業部
商学部卒 2007年入社
開発にも積極的に関わる「現場主義」の男
周りが就職活動に奔走する中、長田はサッカーの練習や試合に全力を傾けていた。サッカーは国際的なスポーツだ。海外リーグや海外選手に夢中になった。「いつか自分も海外で活躍したい」。その想いはこの時代に培われた。
サッカーの合間を縫っての就職活動。幅広い領域に影響力を持ち、将来的にも大きな可能性を秘めた素材産業に絞って活動を行ったが、旭化成ともう一社で迷っていた。既に複数の海外拠点を持ち、そこに若手社員をどんどん送り込んでいるという一社。そして、これから本格的に海外進出を始めていく、それを成功させるためにチャレンジングな人財を採用していくという旭化成。長田が選んだのは旭化成だった。
配属はマテリアル領域、感光材営業部。様々な商品のパッケージに使用され、地球に優しい印刷方式として注目されるフレキソ印刷、その「版」の原材料となる、感光性樹脂を扱う部署だ。事業開始からすでに50年近い歴史があり、全世界をマーケットに自社で開発した感光性樹脂を提案している。入社後間もなく、感光材とは何かもわからぬ長田が、後々まで守り続けることになる仕事のスタンスを決める出来事があった。
「座学で基本的なことを学んだ後、取引先の一つである製版会社に1ヶ月半、研修に行かせてもらえることになったんです。毎日工場に通い、当社の樹脂がどのような工程を経て版になっていくのか、それをどう提案しているのか、といったリアルな現場を体験しました。ここでの経験が、現地・現場を重視する仕事観に繋がったのは間違いありません」
自分たちの扱う商品が、どういう流れで加工され、どう市場に出ていくのか。それを肌感覚として理解した長田は、現場の意見を開発部門に持ち帰り、現実的な課題を解決する感光材樹脂開発に心血を注ぐようになっていく。
「印刷工場では、いかに機械を止めずに印刷を続けるか、というのが生産性を上げる一番のキーになります。例えば版に紙粉(紙くず)が付着すると、一度機械を止めてキレイにしなければなりません。そこで何十分かのロスが生まれ、結果生産性が下がってしまう。それならば、紙粉が付着しても自然と離脱(はがれる)するような樹脂を開発してはどうか、と考えました」
営業部、開発部、装置および評価グループ、長田は上司と共に関係各所とチームを結成し、紙粉離脱性の高い感光性樹脂『テナフレックス』の開発に成功する。この樹脂は多くの製版会社や印刷会社に採用され、現在でもアップデートが続けられるヒット商品となった。
初めての海外勤務でも、信念は曲げず
入社6年目、ベルギー・ブリュッセルにあるAsahi Photoproducts Europe、通称APPと呼ばれる感光性樹脂製品の欧州本社にて、管理部門のマネジャーを任されることになった。
「最初に聞いた時は、驚きました。国内企画営業としてのキャリアしかありませんでしたし、海外担当の企画営業を経た方が駐在員になるというのが一般的な流れだと思っていましたから。不安もありましたが、新しい挑戦に奮い立つ思いでした」
APPは約30名のメンバーからなる販売会社で、ベルギー本社を始めイギリス、イタリア、フランス、ドイツに支店を持っていた。長田に与えられたミッションは、会計、物流、企画といった管理業務の課題点を洗い出して改善し、APPの販売会社としての機能を、管理部門からより強化することだ。APPは現地では歴史のある組織で、業務フローは固まっていた。一言で改善すると言っても、伝統的なやり方に慣れていた現地スタッフのマインドを変えるのは容易ではない。このようなハードルの高いミッションに臨む長田は、当時まだ英語も満足に話せない状態。しかし、入社後の研修で学んだ「現場主義」を胸に、周囲が驚くほど精力的な活動を見せる。
「兎にも角にもまずは現場です。どういう改善を行うにしろ、いま現場で何が起きているのかを正確に知ることが第一なんです。ですから呼ばれてもいないのに各部署や支店に出かけていって、どんな業務をやっているのか徹底的に教えてもらうことから始めました。現場のスタッフも、突然現れて拙い英語で質問攻めにするこの男は誰なんだと、最初は戸惑っていましたけどね(笑)。でも、こちらが真剣だとわかれば、皆も真剣に答えてくれるものなんです。それで少しずつ彼らの業務、そして彼らの想いを知ることができ、そしてまた、こちらがどういう気持ちで改善を行うつもりなのかも理解してもらうことができました。APPのメンバーと課題に取り組んだことは本当に良い思い出です。同志として今でもやり取りを続けています」
現場の信頼を得た長田は、在庫管理のシステムや出荷・請求関連のアラートのかけ方など、課題抽出した部分を次々にブラッシュアップしていった。
赴任から2年で土台は完成し、現地スタッフの意識にも大きな変化が見られるようになったという。
「3年目には日本から元上司も来てくれて、協力しながら本格的な改革を進めました。結局2016年12月までほぼ丸4年ベルギーに駐在しましたが、会社の仕組みやお金の流れなど経営に必要なことを学ぶいい機会になったと思います。欧州と日本の国民性の違いにも触れることができ、本当に良い経験でした」
帰国後、アジア圏でのシェア拡大を目指して
2017年、帰国した長田は再び感光性樹脂製品の企画営業に戻った。担当は、海外。中国を中心とするアジア・オセアニア地区、そして北南米を任されることになったのだ。
「弊社の感光性樹脂は、現在世界シェア第三位という位置づけです。エリア別で見ると、ヨーロッパが順調にシェア拡大しているのに対し、アジア圏、特に中国ではまだまだ拡大の余地が残っている。そこで中国工場を昨年増設し、本格的に拡販していこうと動き始めた所です。とにかくまずは中国圏でナンバー・ワンになること。ヨーロッパとはまた違う商習慣がある国なので一筋縄ではいきませんが、だからこそやりがいがあるんです」
ディストリビュータービジネスが主流だという中国では、代理店との関係構築も重要な業務の一つである。ただ販売を委託するだけでは価格競争になってしまい、製品の細かな性能やこだわりが伝わりきらない。そこで長田は、営業ツールを作成して代理店の営業担当者が製品の説明をしやすい環境を作る一方、自ら中国に行って製版会社や印刷会社に直接アプローチすることにも注力している。英語が通じないケースも多く、アポイントを取ることも簡単ではないが、長田はむしろそういった状況にやりがいを感じるのだという。
「開拓っていうんでしょうか。こういう仕事、好きなんです。自分でやり方を考えて状況を打破していく。タクシーに乗って何とか中国語で行き先を伝えて、現地のセミナーに参加してどんどん自分から名刺交換して。自分が新しいマーケットを見つけることで、当社の樹脂を使う人が増え、結果世の中がさらによくなっていく。そう思うと、こんなにやりがいがあって楽しい仕事って他にないんじゃないかって思うんです」
アメリカ、そして再びのヨーロッパを夢見て
中国である程度の成果を出すまでには、恐らく3年ほどはかかるだろうと長田は言う。「これまでやってきたのと同じことです。まずはとにかく現場を知ること。そういう意味ではまだまだ私は中国を学ぶ必要があると思います。もちろん1年やってきて、ある程度の展望は見えつつあります。ワインやシャンプーのラベル、おむつの外装フィルムといった品質重視の印刷に弊社の樹脂は強いですから、そういう方面にPRしていこうとは考えています」
その後のキャリアはどうイメージしているか、という質問に、長田は嬉しそうに答えてくれた。
「中国の次はぜひアメリカに挑戦したいと思っています。アメリカは大手樹脂メーカーがいくつも本社を構える非常に手強いエリア。そういう意味で、アメリカでナンバー・ワンになるというのは私たち感光材営業部の悲願なんです。アメリカで販売組織を立ち上げていい成果を出し、その後、再びヨーロッパに社長として戻ることができたら最高ですね。当時一緒にやっていたメンバーたちと新しいビジネスを作っていく。考えるだけでワクワクしてきます」
ベルギー、中国、アメリカ。学生時代サッカーを通じて夢見た「世界」で、長田はこれからも前向きな挑戦を続けていくだろう。
休日の過ごし方
休日は、妻と子どもたち(4歳の長男、1歳の長女)と過ごすことがほとんど。自分が大学まで取り組んでいたサッカーを好きになってもらおうと奮闘中です(笑)。また、友人とお酒を飲みに行くことも大事な習慣の一つですね。
1日の流れ
出社、メールチェック
顧客対応(顧客への資料提供等)
展示会打ち合わせ
昼食
顧客対応(納期調整等)
顧客訪問(販売状況・新規開発確認等)
社内打ち合わせ(評価方法)
資料作成(プレゼン資料等)
退社(業務が残っていれば残業)