法務 竹垣 亮太
法務部法務第二グループ
法科大学院修了 2012年入社
ビジネスの現場に踏み込む法律専門職
司法試験に向けた勉強を続ける多くの法学部生が進学する法科大学院。修了者の多くは弁護士や裁判官、検察官など法曹関係のエキスパートを目指す。だが、在学中に法曹界とは別のキャリアを知ることになる。指導教授の一人が元大手商社の法務部門出身だったことから、企業において法律に関わる業務を担う法務職に興味を抱いたのである。その教授はまず、法務部門の社員は弁護士の資格が必要なく、企業の一員として法律の専門知識を発揮できる専門職だと紹介。さらに、顧問弁護士の役割が法律的な解釈から幾つかのアドバイスをすることであるのに対し、法務は法規を参照しつつどのような選択がベストなのか、製品や契約の中身にまで踏み込んで意見を述べ、経営判断をサポートする役割を担うと教えてくれたのである。それで竹垣の心は決まった。
「ビジネスに直結し、成否を大きく左右する。そんな法律の専門職なりたいと考えたのです。300人ほど在籍していた大学院の中で、在学中に就職活動をしたのは私一人だけでした」
旭化成を選んだのは、事業領域が広く、法務職として多様な法律を扱い、幅広い業務ができると考えたからだった。
アクティブに動き、事業を成功に導く仕事
法務の仕事は大きく分けて、契約審査業務、紛争処理業務、コンプライアンス業務の3つがある。契約審査業務とは、旭化成グループ各社の契約担当者または契約の相手方が作成した契約書案が、適法かつ旭化成グループの事業目的に合致しているか審査し、相手方との交渉や契約担当者への法的アドバイスを行うものだ。
「契約書とは、どのようにビジネスを進めていくのかを記した書面と言えます。旭化成が何をどうつくって、どう売っていくのかが把握できるのです。その過程で、独占禁止法や下請法、外為法といった各種法律に抵触するリスクはないかチェックするだけではなく、事業上のリスクやトラブルを未然に回避する方法を一緒に考えていくのです」
こう竹垣が語るように、契約当事者と密に接するだけではなく、工場に足を運んで技術内容を確認したり、相手方にまで足を運んで交渉したりなど、事業の成功を模索していくアクティブな動きは、オフィスワーカーのイメージを覆す。
紛争処理業務においても、係争中の案件を迅速かつ適切に解決するために、関係者へのヒアリングから相手方との交渉に至るまでアクティブに動く。コンプライアンス業務に至っては、旭化成グループ各社が事業を遂行する上で法令及び社内ルールを遵守しているか監査するのみならず、下請法や独占禁止法などに関する社内講習まで行っている。
グローバルに足を運んで係争の収束を図る
旭化成のようにグローバルにビジネスを展開する企業ともなれば、法務が担う案件も海外にまで広がることが少なくない。現に竹垣は現在に至るまで、入社1年目から旭化成グループの海外子会社がある国の会社との間で、一審から上告審まで係争している訴訟案件を担当してきた。販売店契約に関するトラブルで、一審も二審も旭化成側が勝訴したのだが、判例がない案件のため、長引いてしまっているのだ。
竹垣は何度も足をはこび、現地で弁護士を立て、現場と三位一体となって訴訟対応に当たってきた。膨大な訴訟資料は英文。何とか理解しようと努力を重ねたこともあり、英文の読解力はかなり上がった。このように海の向こうでも勝訴を目指して奔走する竹垣は、それがビジネスの重要な一部であることを意識して事態に臨んでいるようだ。
「法学部では、法律に具体的要件を照らし合わせて妥当な結論を導く“リーガルマインド”を教えられますが、私はそれを背景に持ちながらも、旭化成グループの正当性と利益の確保を追求し、仲間の努力を無駄にさせないように動く旭化成の一員であると、いつも強く思っています」
海外留学も可能な研修制度がある
法律だけを知っている者には法務は務まらない。会社の事業内容を把握できてこそ、的確な法的判断やアドバイスができるのは竹垣の日々の仕事から十分に見て取れるだろう。だが、旭化成は事業領域が多彩である上に、製品も化学やエレクトロニクスなど専門性の高い分野だ。法務として十分なパフォーマンスを発揮するまでに時間がかかるのではないかという問いに対して竹垣は、
「確かに旭化成の製品や技術は多彩で、一つ一つの専門性も高く、文系出身者には理解が難しいものばかりです。でも、開発や工場の同僚に説明を求めた時に、誰もがとても親身になって丁寧に教えてくれます。壁のない社風で、仲間のために協力する風土があるのです」
また、法律関連の勉強会や教育も充実していると言う。
「希望すれば、ニューヨークなど海外にあるロースクールに社費留学する機会もあります。これまで何人もの先輩たちが海外各地で学んで帰ってきていますから、私もぜひ挑戦したいですね」
休日の過ごし方
以前はバックパッカーとして、東南アジア、インド、中央アジア、中東、東欧など30カ国以上を一人旅で訪問しましたが、今も休日を利用して国内外の旅行を楽しんでいます。週に1回のテニスや美術館巡りなども普段の生活の中でアクセントになっています。
1日の流れ
メールチェック
担当案件に関して関係者と打ち合わせ
契約書のレビュー
昼食
独占禁止法に関する相談を事業会社の企画担当者より受ける
社外との交渉に同席
担当している訴訟案件の資料内容の確認
契約書のレビューの続き
退社