フルスタックエンジニア 工場自動化 高橋 慶
生産技術本部 デジタルイノベーションセンター デジタルソリューション技術部
人工システム科学専攻電気電子系コース修了 2014年入社
風通しのよい風土が若手の意欲を刺激する
360°の再現映像が可能な究極の3次元テレビの実現を目指して、計算機工学と光学の研究に打ち込んでいた高橋。研究室の友人の多くは大手電機メーカーやシステムインテグレーター等に入社しており、素材メーカーである旭化成に入社した高橋はその中で異色だった。
「旭化成と言えば『サランラップ』くらいしかイメージできませんでした」と笑うほど、学生時代の専攻からは縁の遠い存在だったのである。
それなのになぜ高橋は旭化成への道を選んだのだろうか。よくぞ聞いてくれたとばかりに身を乗り出して高橋が口にしたのが、“人と風土”だった。
「役員面接も含め、お目にかかった方々といつも話が盛り上がりました。波長が合ったんだと思いますが、垣根を感じることなくお話ができ、こういう人たちと一緒に働きたいと思ったのです」
実際に入社したところ、そうした想いはさらに確かなものとなった。旭化成の社員が異口同音に挙げるのが職場の風通しのよさであるが、高橋も例えば役員を“さん付け”で呼ぶ習慣などを通じて、そうした風土を実感したという。
「若手でも臆せずに役員クラスの先輩と話が出来る土壌に、大きな魅力を感じました。飲み会でも若手の意見に役員が耳を傾けてくれます」
そしてもう一点、高橋が旭化成を選んだ理由として挙げたのが“少数精鋭”というキーワードだった。
「私は学生時代にLSI設計の経験があり、IT人財として活躍したいという志がありました。しかし、大手IT企業だとシステム開発でも一部しかできないし、IT人財だらけなのでやりたい仕事ができるとも限らない。その点、旭化成ならIT人財は貴重な存在なので、若手でも責任ある仕事が任されるだろうと考えたのです。まさに少数精鋭メンバーの一人として活躍できると思いました」
その言葉通り、高橋は若いながらもメディアからも注目されるほどの活躍をすることになる。
先輩と後輩の3人だけで完全内製したIoTアプリ
2018年9月。大手経済新聞の一面にIoT関連の特集記事が掲載された。取り上げられていたのは、高橋が開発に参加した業務用IoTアプリケーションだった。
「『ヘーベルハウス』の住宅部材を製造する工場では、効率化のために作業員がタブレットでこのアプリを見ながら部材の組立を行っています。製造に必要な機器がネットにつながり、送られてきた指示に基づいて作業を進めていくというこのアプリの開発は、その企画から設計、プログラミング、リリースに至るまで先輩と後輩の3人だけで取り組みました」
つまり外部のシステムインテグレーター等が一切関わっていない、完全内製のアプリケーションなのである。一般的な開発の場合、使い勝手等のニーズをまとめる要件定義等の“頭を使う作業”は発注者側が行い、その後の詳細設計や開発といった“手を使う作業”は外部に委託するのが普通の進め方だ。だがこのアプリケーションは、“頭を使う作業”はもちろんのこと“手を使う作業”さえも、高橋たちが自分の手を動かして完成させたのである。その意味では高橋はシステムエンジニアというより、開発のすべての工程を1人で手がけるフルスタックエンジニアと呼んだ方が正確だろう。
すべてを内製する理由は明白だった。その方がよりよいシステムができるからだ。
「外部に委託すると、いったん決めた仕様はなかなか変更できません。しかし、現場のニーズは刻々と変わっていきますから、求められる仕様も変わっていくのが当たり前。発注者である我々自身が開発を行うならば、仕様変更も何のためらいもなくできます。結果としてよりよいシステムができあがることになるんです」
仕様変更への対応だけでなく、新しい技術や開発手法も、失敗を怖れることなく、ためらわずに導入できる。IoTやRPAといった新しい分野のチャレンジであるほど、こうしたアプローチは有効であると言えるだろう。
そして特筆すべきは、上層部からの指示で始まったプロジェクトではないということだ。
「先輩からの“ちょっと手伝って”という言葉で始まりました。こんなふうに、自分たちが見つけた課題に自由に取り組むことができる環境があるんです」
その背景には若手が当たり前のように役員と議論を交わすカルチャーがあり、若手に大胆に責任ある仕事を委ねる土壌がある。
「さらに、分業化せず、1つのプロジェクトに対して1人の担当者が最初から最後まで担当する文化があるため、“想いを貫く”ことができるんです。たとえ突拍子もないアイデアであっても、自らの意志でその実現に向けて挑戦できますから、好きなことをのびのびやらせてもらっています」と高橋は、笑う。
若手の提言を役員が真摯に受け止める
こうした旭化成ならではのDNAを高橋が強く意識するようになったのは、入社2年目のあるエピソードがきっかけだった。
「私の4つ上の先輩が米国企業を視察。帰国後に出張報告書を作成しました。その報告書には米国企業ではいかにIT化が進んでいるかが細かく記され、締めくくりとして“このままでは旭化成はITによるグローバル競争で後れを取る”という強い危機感が示されていたのです」
この報告書は部内どころか役員にまで共有されるなど、社内で広く知れ渡る存在となった。そしてこのレポートを契機に旭化成のデジタル化への取り組みは大きく一歩を踏み出すことになったのである。
こうした一連の動きを目の当たりにした高橋は、20代の若手社員の意見であっても役員が真摯に耳を傾け、会社の戦略に反映させていく、ということを知ったのである。そして、この報告書をまとめた社員こそ、先に紹介したIoTのシステムを高橋と一緒に開発した先輩だった。
一方で、創業から一世紀近い歴史を通じて培ってきた精神も、高橋にしっかり受け継がれている。それが現地・現物・現認の「3現主義」だ。
「歴史あるメーカーの社員として“3現主義”は心に刻まれていますから、とにかく現場へ足を運び、現場の声に耳を傾けることを徹底しています。IoTにしろ、RPAにしろ、現場の声から見つかったニーズを解決するためにあるのですから」
まさに現場が身近にあるからこそ見えてくる“リアルニーズ”こそ、高橋が立ち向かうべき課題なのである。
「私のスタンスとして“できません”とは口にしないようにしています。どんな難題であろうと、それがリアルニーズに基づくものであれば必ず解決してみせたいと思います。その先にある、ユーザーの“ありがとう”の言葉こそ、一番のモチベーションですね」
AIの先駆者として会社のプレゼンスを向上
今後の高橋が取り組むテーマの一つがAIである。すでにある生産ラインに、人間が目視で行っていた製品チェックをAIが代行するシステムを導入しようと取り組んでいる。開発中のAIには人間以上の識別効果の出ることが見込まれており、大幅な省力化につながることが期待されている。もちろんこれも完全内製による開発だ。
「このようにすでにAIを生産現場に導入しようとしています。今後はその普及を通じて社内に広く知見を共有していきたいですね。そして素材メーカーにおけるAI活用の先駆者として、旭化成のプレゼンスを高めていけたらと考えています」
また、個人的にはデータアナリティクスの知見を深めていきたいと考えており、ゆくゆくは社内外に名の知れたカリスマ的な存在も目指したいという。
若手が自由に発言・発信できる風土に惹かれて旭化成に入社した高橋は、学生時代に電気電子を学んだものとしては異色の存在だったかもしれない。だが、異色とはイノベーティブであることにも通じる。その先進性を武器に高橋は、今後さらに旭化成のデジタル化を強力にリードしていくことになるだろう。
休日の過ごし方
学生時代から始めた硬式テニスに集中しており、休日はテニスをして過ごしています。会社のテニス部にも所属し、大会に出場することもあります。ライバルに勝ちたいというモチベーションのもと、無心にボールを追っている時間は最高です。
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