企画営業 断熱材 稲本 拓也
住宅領域 旭化成建材 東京断熱住宅資材第二営業部
工学部卒 2012年入社
素材というフィールドで自分の力を試したい
あらゆる製品の最も川上に存在する“素材”。「目に見える形で世の中に貢献したい」という強い思いを持っていた稲本が、国内有数の素材メーカーでもある旭化成に惹かれたのは必然だったのかもしれない。
大学の専攻は環境都市工学。土木・建築から環境問題まで幅広く学ぶ学部である。ここでの経験が後の建築士資格の取得などにも繋がっていくのだが、稲本のメンタリティにより大きな影響を与えたのは、大学時代の全てを捧げたと言っても過言ではない体育会ボート部での日々だ。
ほぼ毎日合宿所に寝泊まりし、毎朝4時半に起床して朝練、大学での授業が終われば艇庫に向かい、日が沈むまでひたすら練習。このような日々を過ごす中、皆と一つの目標に向かって努力していくやりがいに気付いていく。
「学部の仲間はほとんど大学院に進みましたが、私は就職を選びました。いち早く社会に出て、人と本気でぶつかりあえる仕事で、どれだけできるか勝負してみたいと考えたからです」
配属は住宅領域。世界初の人工プラスチック「フェノール樹脂」を使った断熱材『ネオマフォーム』を扱う断熱材事業部に入った。数値が小さいほど断熱性能が高い熱伝導率で、世界トップクラスの0.020W/(m・K)を誇る高機能な断熱材である。稲本の仕事は、このネオマフォームを大手商社、代理店、ハウスメーカー、あるいは工務店などに対して提案することだ。
「企画営業と一言で言っても手法は無限にあります。代理店と協力して工務店に提案することもあれば、地域に多くのパイプを持つ代理店に単独で関係づくりに出かけることもある。大手商社から情報を仕入れて営業先を選定することも大切です。ネオマフォームは非常に優れた製品で、使用することで生活が快適になっていく。だからこそ、どうやればこの魅力が相手に伝わるのか、については徹底的に考えました」。
その答えの一つとして稲本がたどり着いたのが、入社2年目に取得した建築士資格。大学時代の経験がベースになったのは確かだが、彼を突き動かしたのは、営業先で出会う家づくりのプロフェッショナルと同じフィールドに立ちたい、という想いだった。こうして稲本は設計・施工の専門知識を自らが装着することで、より説得力のある提案を可能にしたのである。
入社3年目で「信州NLC」設立を実現
そんな稲本が最も印象的だと語る仕事がある。2014年、長野県全域を担当していた頃に実現した、『信州ネオマリーダーズクラブ設立』がそれだ。
ネオマリーダーズクラブ(以下NLC)とは、ネオマフォームを標準採用した快適・健康・省エネな住まいづくりに取り組んでいる地域工務店によって構成されたグループのことだ。ネオマフォームは世界最高レベルの断熱性能を持つ断熱材であり、一般的な断熱材より高額である。従って、製品の特性や強みをしっかり理解・納得してもらわなければ、契約まで至ることは難しい。こうした状況の中、ネオマフォームを標準採用している企業を集めてクラブを設立し、その魅力や実績をグループとして伝えていくことができれば、より効率的な拡販が可能となる。しかし、クラブを設立するにはまず相応数の企業にネオマフォームを標準採用してもらわなければならない。稲本が長野県担当になった2014年、NLC設立を成し遂げていたのは国内で最も寒冷地である北海道の1か所のみであったことからも、その難易度の高さが伺えるだろう。
「第一に、クラブ設立に向け、ネオマフォーム採用社数を増やす。そのために地域のキーマンの信頼を得ることから始めました。当然、一筋縄ではいきません。厳しい納期に対応したり、特注品を作って欲しいという依頼に応えたり、必死に対応して少しずつ関係を築いていったんです。納期や仕様に対するオーダーには工場や開発が一生懸命応えてくれ、企画部にPRグッズを作ってもらったりと、まさに社内一丸となって勝ち取った信頼でした」
その後、あるコミュニティ内でキーマンとなっていた経営者がネオマフォームを積極的に同業者へPRしてくれたことで、信州NLC設立が一気に現実的になっていく。会則の起案・作成から研修企画、講演者招致などあらゆる準備を進めた結果、この信州NLCには地域の有力企業十数社が集まり、売上高も大幅に躍進した。
稲本はこの成功を通じてさらに自信を深めると共に、「より大きな世界で自分の力を試したい」という想いを強くした。結果選んだのは、社内制度を使った海外留学の道である。
カリフォルニア大学で国際経営学を学ぶ
2016年、稲本は社内留学生制度を活用し、全米州立大学ランキングでトップ10入りする名門校カリフォルニア大学(アーバイン校)に留学。半年間、国際経営学を学んで過ごすことになった。稲本の頭の中には、この時点で既に「いずれは海外」という目標ができあがっていたという。
「人が豊かに生活していくには、衣食住の充実が必要と言われていますが、日本は衣食の領域ではすでに高いレベルを実現しています。でも住に関してはもっと良くしていける可能性がある。だからこそ、将来的に弊社製品を海外に伝えていけるような立役者になりたいと思いました。そのためには語学力や異文化理解は必須。将来的に海外で活躍できる人財へと成長していくために、この制度を活用することにしたのです」
半年後、日本に帰国した稲本は再び営業部(東京断熱資材第二営業部)での勤務をスタート。ネオマフォームの新たな取引先を開拓すべく奔走する。
「現在の第一ミッションは、北関東甲信越での成果をさらに拡大すること。担当エリアの結果は、すべて担当者である私の責任です。限られた時間の中で、いかにシェアを拡大していけるか。実際に数字として表れた時は、非常にやりがいがありますね」
それと並行して取り組むのが、日本全国に営業展開を図る工務店に対するアプローチだ。
「トップ企業は担当者の知識レベルも高く、彼らが持っている以上の詳細かつ正確な情報が求められます。それ以上に重要なのは、いかに相手の立場で提案ができるかどうか。ネオマフォームを採用するとどのようなメリットがあるのか、住宅の受注にどう貢献できるか、市場トレンドや法律・条例の動きについても触れながらじっくり説明します。一方、突発的な動きにも対応してもらえるよう、製造、物流、企画といった他部署とコネクションを作っておくことも大切ですね」
北関東甲信越で精力的に営業活動をしつつ、一方では工務店との信頼関係構築に励む。その先には、よりスケールの大きなビジョンが既に見えている。
「より大きな目標を言えば、日本の家から『寒い』をなくす、ということです。近年、人生100年時代と騒がれていますが、住宅の暖かさが健康年齢に影響することは科学的にも証明されています。つまり、旭化成の製品を普及することで世界の人びとの “いのち”と“くらし”に貢献できる。活動そのものが目標達成への一番の近道なんです。だからこそ、製品の魅力を伝えるスキルはもっともっと上げていきたい。そのための努力は、正直努力だとは思いません」
海外で活躍できる人財になる、その強い想い
北関東甲信越を中心に国内営業に全力を傾ける稲本だが、ビジネススキルを磨き、商品知識をさらに充実させていく中で、「この商品は海外にどんどん広めるべきだ」という想いはさらに強くなっている。
「ネオマフォームという世界トップクラスの性能を持つ製品を、もっと広い範囲に提案していきたいんです。そうすれば日本国内だけでなく、世界中の人たちに快適な暮らしを提供することができる。ヨーロッパなのかアジアなのか、どの国でどのようなビジネスを展開するのか今の時点ではわかりませんが、自分で新しい歴史を作っていきたいという想いは非常に強いです」
いつかそのチャンスが回ってきた時、きちんと成果を出せる自分になっていたい。そんな未来への想いが稲本を駆り立てる。
「今の自分が海外ですぐ通用するとは思いません。だからこそ、日本国内で与えられているミッションに全力を尽くす。段階的に成長して、自分のやりたい仕事に一歩一歩近づいていく。そうやってきちんと未来を見据えて日々を過ごすことが重要だと思います」
大学時代のボート部では、がむしゃらに頑張っても試合に勝てなかった。そこで稲本は、「目標を具体的に設定して計画的に努力する必要性」を学んだ。
入社から5年。稲本は着実に未来のビジョンに向かって進み続けている。
休日の過ごし方
世界の一流ビジネスマンたちは、自分の仕事以外の情報や知識にも敏感です。そこで最近の休日は、語学や経済学などの一般教養を学び直すことに費やしています。また、家族と過ごす時間の合間に身体づくりの為にジムに行くこともありますが、その際は自分で作ったワークアウトプレイリストを使い、効率的なトレーニングを行います。気分転換に海外ドラマを見るのも好きですね。
1日の流れ
出社、メールチェック
朝礼
見積もり作成
資料作成
昼食
移動
設計者との打ち合わせ(新規顧客)
移動
社長との打ち合わせ(新規顧客)
移動
営業販売会議(既存顧客)
直帰