技術者として、自分の
意識を軸に歩んでいく
2015年入社
環境都市工学科 本科卒
延廣 耕作
KOSAKU NOBUHIRO
エンジニアリングセンター 土木建築部
方向転換のきっかけはインターンシップ
延廣が土木・建築の道へ進むことを決めたのは、東日本大震災が発端だった。「ショッキングな映像を見て、土木系や建築系は、これから先どんな時代でも必要なものだと感じたから専攻に選びました」。5年後、就職先として、同級生のほとんどがゼネコンを志望する。延廣もその一人だった。施工側のゼネコン企業か、発注側の市区役所またはメーカー企業。たくさんの就職説明会に足を運んだ延廣の心を変えたのは、旭化成のインターンシップだった。
「派遣される前は、いまいちどんな仕事をするのか把握できていなかった。けれど、先輩の仕事に付いて仕事の流れを教えてもらううちに、興味が湧いてきました」
なぜなら、ひとつの工事にゼロの段階から参入して、完成まで手がけることができる。決められたレールの上でしかできない仕事ではなく、計画段階から最後まで自分で面倒みられる。しかも、海外への展開も現実的−−。延廣の好奇心に火が着いた。
入社後は、延岡の同部署へ配属。約2年の勤務を経て、現在の川崎製造所へ異動となった。延廣が担う業務とは、施工の計画から実施まで、すべてを遂行すること。現場からの依頼に対して、チームを組んでメンバーそれぞれの役割を手に進めていく。延廣は、設計から予算組み、スケジュール管理、施工業者とのやりとり、施工の実施までを担当。上司のサポートを受けながら、自分が主担当となり現場に立つ。
入社1年目にして、数十万円~数百万の規模の案件を、主担当として乗り切った。
「上司がついてくれますが、金額でいうと億を超える工事に携わることも。入社後すぐの若いうちから大きな案件に携われて、自分の考えで仕事を進めることができる。ひとつのプロジェクトが終わるごとに達成感があります」
地味に思えた仕事から得た、大きな学び
延岡に配属後、最初に託されたのは、排水溝の設置だった。「なんだか地味な業務だな。排水溝ならどこにでもあるし、簡単な仕事だろう」。そう思ったのも束の間、設計の段階で事の大きさを知る。まず、冠水に対する設計の為、雨量と工場排水量など入ってくる水量を完全に把握しなければならない。その水量に適切な大きさの排水溝を設置。適度な勾配をつけて流れる速さをコントロールする。この時、地上部分に段差ができると、従業員がつまずく恐れもあるため配慮が必要だ。加えて、コストやスケジュール管理もある。
「考えることは山積みでした。設計が終わると、今度は施工。品質・安全・工程のすべての面で達成できるように計画を立てていきました」。工事から1週間後、明日は朝から砕石を敷くというタイミングで、延廣にとって予期せぬ事態が起こる。「朝現場に来たら、辺りは湖になっていた。掘削した際に地下水脈に当たってしまったらしく、水が湧いたようでした。計画時では、地下水脈はもっと深い位置だったんです」。もし、ベテランの技術者であれば、不測の事態に備えて最初からポンプを持ってきていたのかもしれない。でも延廣にとっては、初めての担当現場。計画外の出来事に対応できる経験と知識は、まだ身についていなかった。
「すぐに上司に相談して、事態は無事に収まりました。この時に学んだ“危険予知”は、今に活きています」。イメージだけで仕事内容を決めつけてしまうと、事態に対応できなくなってしまう。必要なのは、図面では見えてこない出来事への、技術者としての柔軟な姿勢。経験の浅いうちから身をもって経験することで、延廣は大きな学びを得た。
年数を重ねて経験値も上がってきた現在、億規模のプロジェクトを任されている。「とある原料を貯蔵するタンクを建設するプロジェクトです。そのタンクは140tを超える大容量の物で、タンクを設置する地盤は支持力不足や液状化の懸念などの技術的な課題やコスト、工期の制約があります。土木建築部として様々な課題をクリアする為、地盤改良・基礎及び防油堤の設計から見積、施工管理まで担当しています」。延廣は土木の専門家として、他の専門家と対等に肩を並べて、ビッグプロジェクトを遂行している。
技術者としての階段をのぼっていく
「少ないときは3件ほど、工事が集中する時期は10件ほどの案件を同時進行させている」という延廣に求められるのは、技術者としてのタスク管理。それには、高専時代に取得した『2級土木施工管理技士』の勉強が役立っている。「学生時代は単位のために取得しましたが、管理方法や法律について学べたので、今に活きています。」次は1級を目指す。それには、さらなる実務が必要になる。建築士の資格取得も含め、経験を積みながら勉強を続けている最中だ。
土木も建築もある。扱う範囲は、プラントから研究施設、ダムや鉄道までと幅広い。多岐にわたる仕事があるから、技術者としての経験も知識も深めることができる。誰かの影としてではなく、失敗もやりがいも達成感もすべて、自分のものとして歩み続けている。
いつかサメと泳げる日を夢みて
延岡勤務時、工場の近くにダイビングスクールを発見し、宮崎の海でダイビングの世界に飛び込んだ。休日には、静岡県伊豆の海へ出向いてダイビングを楽しむ。冬用の潜水服だと全く濡れず寒さも感じないため、一年中潜ることができる。いつか海が綺麗な小笠原諸島へ行って、サメと一緒に泳ぐのが夢。