現場で得た経験を強みに、
道を切り拓く
2009年入社
化学システム工学科卒
水本 亮
RYO MIZUMOTO
日本エラストマー大分工場 製造課 課付
交代勤務での日々を糧にして、次なる土台へ
「旭化成に入ってから、自分のやりたい分野を見つけられたらいいと思っていました。固執しすぎるのは得意じゃないんです」。
そう振り返る水本は、大学時代、プラントの基礎となる化学工学の技術を幅広く学んでいた。在学中は光触媒を使った防錆・防食について研究。1年という期間では思うような効果は得られなかったが、全くのゼロベースから新たな分野へ試みたことで、この先どの分野に足を踏み入れたとしても、その中で自分のやりがいや居場所を見つけられるという気持ちを育むベースとなった。
入社後の配属は、製造課の交代勤務。「交代勤務があると聞いていたので、勤務自体の違和感はありませんでした。それよりも「製造交代勤務」と聞いて流れ作業のイメージでいたら、実際は覚えることも多く、自分が思っていたよりも難しかった。多種多様に対応することが求められました」。
それもそのはず。大分工場では約40銘柄を製造しており、一つのプラントで何十種類も造るため、ひとつ造り終えたら一度リセットして次の製造へと切り替える。精製から反応、乾燥、そして洗浄までを、プラントごとに平行して稼働しているため、すべてを把握する必要があるのだ。その中で、求められるのは生産性。「長時間同じ製品を継続して製造できないため、どうしても生産性が落ちてしまう。銘柄ごとの条件や特徴を知り、生産性に繋げなくてはなりません」。
製造する製品を変えるときは、すべてのラインをストップして、原料等を変更するわけではなく、ひとつの製品の生産が完了する際には、前工程が終わり次第、その中の原料を変え、次の製品に、中工程の製造が終わると次の製品に切り替えるなど、24時間プラントは稼働しており、その中で、製品の切り替えを行う。限られた時間内で製造する製品を切り替え、かつそれぞれの製品の品質を高い水準で担保するという高い専門性、スキルが求められる仕事に携わっている。
同期に差をつけて、誰よりも早く覚えよう。他の人とは違う“何か”を見つけよう。メーカーとしての真髄である製造で運転主任を目指し、国家資格もいち早く獲得。その意識が、検討業務へと異動となった今の水本の糧となっている。
5年間の交代勤務から、製造課 課付へ異動。課全体が抱える課題を解決するテーマをもつ。現在、4年目を迎える。「合成ゴムでは、課付は大学院了の先輩が配属されることが多いので、異動を聞いたときは驚きました。自分に何ができるのかなって」。
自分だからできること−。自分にあるのは、5年間の現場経験と現場サイドの視点。これが、水本の最大の強みとなった。
億単位の業務を背負った、新たな挑戦
課付として、生産性やコストダウンを図り、一連の設備の検討業務を担当することになった1年目。水本に任されたテーマは、負荷の高い排水をどう低負荷にするか。そこで新たに目をつけたのが、活性汚泥法だ。
「元々、排水の技術がなかったので、活性汚泥とはなんぞや、というところから勉強が必要でした。現場や外注先の人から聞かれた時に、きちんと答えるのも課付の仕事の一つですから」。
外注先と手を組み、予算を含むシミュレーションを重ねた結果、1億円をかけて新たな設備が導入された。
2年目には、冷凍機の課題に着手。ポリマーの製造における反応工程で原料の冷却化が必要になるため、新たな冷凍機の増設を検討した。「ただ導入するだけでは面白くないので、活用することでコストダウンできないかという考え方にシフトしました」。水本の検討が実り、結果、年間数百万円のコストダウンに繋がった。
また、原料を冷やすことで生産性に違いが出ることにも着目し、工程途中において除熱待ち時間の必要がなくなる設備を導入。これは、年間1,000万円のコストダウンとなり、『有功賞』を受賞した。技術だけでなく、数字としての結果が評価された証だ。
「現在の業務では、生産性はコストに直接繋がります。そこを考えながら改善していくことが大事。現場にいたからこそ、改善された数字の持つ意味というのを実感しています」。
現場にいた時は1時間に使うスチームはこのくらいと把握はしていたが、水本の今の業務で必要なのは、コンマ数トンの世界。それが年間何百万円という数字に化ける。
「課題は無限にあります。あとは自分自身が解決していく力をつけていくこと」。
現場の視点が、すぐ先の未来を変える
何か現場でトラブルが起きたとき、製造課ではチームとして対応にあたる。
「わからないときには、みんなで知識と技術を寄せ集めて教え合う。そうやって解決するのが好きですね。今はよりいろいろな人と話す機会が増えたので、難しい技術と考え方を吸収している最中です」。
水本の上司は3年後、5年後を見据えた検討をするのに対して、水本が見つめる先はもっと近い未来。現在は、超省燃費タイヤ、重交通用の道路の改質材等の素材を生成するための、生産技術の開発や能力増強に取り組んでいる。そこには、現場で得た視点が活きている。
「現場を知っているか知らないかでは、視点が違ってきます。設備検討には、机上では見えない、数値では表せない部分、つまりノウハウの部分が必要。そこの視点を持っていることは、自分の強みですね」。
現場の視点で掘り下げていくと見えてくる、改善へと繋がる道がある。水本は、自らの手でその道を切り拓き続けている。
マイホームを手に入れた充実のライフ
出身は福岡県大牟田市。同郷の女性と結婚し、念願だったマイホームを手に入れたばかり。その際、住宅補助制度により手当金が支給された。近所に住む先輩の薦めもあり、地域の消防団に今年から入団。地域の人とのコミュニケーションも楽しんでいる。