2人のデータサイエンティストが語るMI推進で描く旭化成の未来

旭化成はAIや統計解析によって材料開発を効率化するMI(マテリアルズ・インフォマティクス)の推進に注力しており、近年ではMIやデータサイエンス領域の知見・技術を持った数多くの人材が活躍しています。今回は旭化成におけるMIの活用と普及をミッションとする部門で活躍するキャリア入社社員2名に、新たな活躍のフィールドとして旭化成を選んだ理由や、これまでに担当してきたプロジェクトの内容、旭化成でMIに携る意義や面白さ、今後のビジョンなどについて語ってもらいました。

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次なる活躍のフィールドとして旭化成を選んだ理由

I.K

新卒で総合化学メーカーに入社し、石油化学プラントの製造スタッフとして技術検討や生産管理の業務を担当していました。私自身、大学院で化学・化学工学の分野にAIを応用するケモインフォマティクスの研究をしていたこともあり、その発展系であるMIの領域で仕事がしたいと考えていたのですが、前職では、MIを推進する部署への異動は難しい状況でした。それでも業界全体でAI活用の機運が高まり続けていたこともあり、私としては「今こそMI領域で仕事をすべき時期」という思いもあったので、転職で道を切り開こうと考えたのです。

H.I

私は化学メーカーの技術営業、半導体製造装置メーカーの開発マーケティング職を経て大学院に入り、博士課程で統計科学やMIの研究に取り組んでいました。当時はアカデミアでのキャリアを考えていたのですが、研究室を通して現在の直属の上司にあたる方に自分の研究を紹介する機会があったのです。そのときに旭化成が進めようとしているMIの応用研究分野や仕事の幅広さについて伺ったことが転職のきっかけとなりました。

I.K

製薬業界ではケモインフォマティクスに取り組んでいる会社も多く、さまざまなデータを蓄積しているという実績もあったので、転職活動を始めたころは製薬会社を中心に検討していました。ただ、あるとき転職エージェントの方から旭化成のMI部門に関する求人票を見せていただき、業務の内容がまさに、自分のやりたいことと完全に合致していると感じたのです。それが旭化成を選んだ決め手となりました。

H.I

大学院ではさまざまな企業と共同研究も行っていたのですが、企業でMIに携っている多くの人たちから、「ボトムアップで進めているから、会社全体に広がらなくて困っている」という話をよく聞いていました。一方、旭化成はMIの活用・推進に関して経営層もしっかり理解しているということで、トップから「勢いよくMIを進めていこうという強い意思を感じたのです。当時、話を聞いていた現在の直属の上司も非常にポジティブな方なので、自分としても「やりたいことができそうだ」と考えて入社を決めました。

02

旭化成入社後に取り組んだ業務やプロジェクトについて

I.K

2018年の6月に入社したばかりですが、入社直後は研究開発部門に配属された新入社員向けのMI研修のサポートを担当しました。とくに研究開発フェーズでは、少ないデータをいかに集めるかということが重要になるため、自分が学生時代に研究室で得た知見をもとに、効率的なデータ収集や少量のデータを活用する手法などについてレクチャーしました。その後は各部門と協業する形で、自社の保有データを顧客にわかりやすく伝えるためのコミュニケーションツールの作成や、画像解析で素材に付くキズの発生原因を推定するディープラーニングを活用した予測モデルの作成、強度や難燃性などの複数特性を両立する新規素材の開発といった複数のプロジェクトに取り組んでいます。

H.I

私が入社した当時はMIに関わるメンバーが少なかったこともあり、全社に対してMIに関する取り組みを認知してもらう必要がありました。先ほど言ったように経営層はMIについて理解していたのですが、現場レベルへの浸透はまさにこれからでした。そのため、入社1年目は「多くの案件で、多様な事例をつくる」ことに集中しました。さまざまなテーマに対して、組成の探索から画像解析、文章分析まで、ありとあらゆるアプローチで課題解決に取り組みました。2年目以降は外部データを有効活用するための技術開発や、他の化学メーカーと共同で基盤技術の研究・開発を進めるといったオープン戦略的なプロジェクトにも参加するようになりました。また、意識的にMI関連の講演会、研究発表会で登壇する機会を増やし、社内外で人的ネットワークをつくることにも注力しています。

I.K

MIというと材料開発ですが、私たちの業務は基礎研究的なことだけでなく、社外との共同開発や現場の方との協業、教育も含め、非常に多岐にわたっています。私自身も先ほど挙げた業務のほかに、機械学習勉強会のサポートを担当しています。製造現場の技術者のみなさんが、自分たちで異常兆候や歩留まり悪化原因を運転データから究明できるよう、データの扱い方について月1回のペースでレクチャーしています。

H.I

私たちの部署のメンバーがどれだけ増えたとしても、私たちだけで旭化成すべての課題に対応することはできません。だからこそ、現場の方にデータの見方や扱い方を伝えていくことも、私たちの重要なミッションの一つとなっています。

03

データサイエンティストにとっての「旭化成」という職場

H.I

入社前に想定していた通り、全社を挙げてMIやデジタル化を推進する動きがあるため、非常に成果を出しやすいと感じています。「自部署だけで事例をつくっているので成果が上がらない」という他社のデータサイエンティストの話も聞いているので、その点では旭化成は恵まれていると思います。また、全社に向けて成果や事例を発表できる機会が数多く設けられていることもありがたいですね。

I.K

社内の勉強会や交流会が形だけのものになっていないことも素晴らしいと思います。私がサポートしている機械学習勉強会にも、さまざまな部署、さまざまな職種、幅広い年代の方が参加されているのですが、新しい技術を積極的に学ぼうという意欲の高い方が多いと感じています。

H.I

旭化成では多くの社員が進んで協力してくれるので、データサイエンティストとしては非常に働きやすいと感じています。他社では「現場が協力してくれない。データを提供してくれないから話が進まないという状況で苦しんでいるデータサイエンティストも珍しくない中、旭化成ではこちらから売り込まなくても現場から「やりたい」と声があがるので本当に助かっています。

I.K

私たちのような仕事は、自分たちの部署だけで業務が完結することはありません。部門を超えてさまざまな職種の方と協業できることにやりがいを感じていますし、誰もがMIのような新しい技術に対して熱意を持って取り組んでくれるので、こちらとしても本当に嬉しいです。

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化学メーカー・旭化成だからこそ得られるやりがい、描ける未来

H.I

ITやWeb系の会社ではビッグデータを高速に処理する基盤をつくり、その基盤の上で動く解析手法を組み込むという流れができつつあります。一方、旭化成のような化学メーカーでは課題に対するアプローチに関して、まだまだアイデアで勝負できる余地があります。データサイエンスの知見を活かして、新しい切り口で新しい課題を解決したいと考えている方は、旭化成で楽しい仕事ができるはずです。また、「化学の知識はないけれど、ものづくりに興味がある」「デジタルの側面から化学やものづくりに関わりたい」という方にもお勧めしたいです。

I.K

旭化成は事業領域が広く、扱っている製品も多岐にわたっているので、多種多様なデータを扱えるという魅力があります。データの量こそまだ少ないのですが、データの種類は非常に多いのです。実験のデータや設備・工場運転のデータ、顧客データ、マーケティングデータ、そういったさまざまなデータを組み合わせ、最適な解析方法を適用し、新しい価値を見出せる点に仕事の面白さがあると思います。また、より深く知りたいと思ったら、すぐに現場に足を運んで確認することができますし、現場の方も心よく協力してくれる環境があることも魅力ですよね。

H.I

今後は研究開発部門だけでなく、旭化成全社でAIや機械学習が日常的に活用される状態をつくることが目標です。また、入社前から考えていたことですが、旭化成を「素材業界のGoogle」のような存在にできたらいいなと思っています。あらゆる手法で素材に関するデータを収集して強力なMI基盤をつくり、プラットフォームとして提供することができれば、多くの企業がR&Dを進めやすくなるはずです。夢物語のような話かもしれませんが、そんな話にも旭化成の役員や上司は真剣に耳を傾けてくれます。

I.K

実は私は、大学入学前にPCを触ったことすらなかったのですが、大学4年生と修士の2年間、合計3年間でPCを覚え、ある程度のデータ分析に関する知識を習得することができました。そう考えると、旭化成のあらゆる社員がデータを扱えるようになることも夢ではないと思っています。まずは旭化成の全社員がAIやデータを身近に感じ、データを抽出できるような土壌をつくっていきたいです。そしてその流れを化学産業全体に広げていくことで、社会に貢献していきたいと考えています。