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Project Introductionプロジェクト紹介

サラン製造プラント
設備改善プロジェクト

悔しさをバネに、
新たな視点で踏み込んでいく

サランラップの原料を製造するプラントで、5年以上頻繁にトラブルを起こし続け、現場を悩ませていたポンプがあった。当時入社1年目の若き上笹貫は、このトラブルの原因究明と解決を胸に決め、向き合うことにした。「絶対に改善してやる」という強い意気込みとともに。

2014年入社 機械工学科卒

上笹貫 祐作YUSAKU KAMISASANUKI

延岡第一設備技術部 愛宕設備技術課

表面上ではない、根本を探し求めて

地元宮崎で就職したいという思いと、高専時代に先輩社員の話を聞いたことが重なり、旭化成への入社を希望。「その先輩は当時入社3年目で、自分が想像していたよりはるか上をいっていた。この会社なら僕もいろんなことに挑戦できて、人として成長できるかもしれないと感じました」。その先輩は現在、上笹貫の斜め後ろのデスクにいる。すごいと感じた先輩と、並んで仕事をする日が現実となった。
入社後より、サランラップの原料を製造するプラントの機械保全を担当している。プラントが安定的に稼働するために、機械の不具合の点検や修理、設備改善の検討が主な業務だ。「入社して初めての業務は、プラント内のある機器が、設備の真円度から外れそうになっていたのを発見したので、機器を変更したいと提案することでした」。上笹貫に求められるのは、故障や異常のある機器や設備をただ単に補修するだけではない。再び故障が起きないようにすることが重要な任務。「表面的に直接原因を補修しても、また同じことが起きてしまう。製造課の話を聞いたり、上司の経験から知恵を借りて、故障に至った経緯や根本を探る。どうすれば再び壊れないかを考えて、改善していくことが大切です」。もし設備のどこかが故障しプラントを停止しなければならない場合、1年で何億という損失を被る。常に先回りする思考が、功を奏するのだ。
延岡のプラントは70年という歴史があり、老朽化が所々見られる。たとえば、腐食していて10年周期で交代している鉄の機器に対して、腐食しないステンレス製に変えるのはどうか、他の部品は問題ないかどうかと、目の前の現実以上を予知して、検討・提案する。上笹貫には、改善する際のデータ検証や予算組みも任される。「保全といっても直すだけではなく、材料の特性や予算面までを見直すよう努めています」。その意識が、よりより改善へとつながっているのだ。

ひとつのポンプに秘められた改善への道

入社1年目の冬。危険物であるアクリル酸を扱うポンプの故障が多発した。「よく故障していましたが、調べたら3ヵ月周期、年間11回ほど故障していることが判明しました」。応対処置として、一旦設備を停止して、ポンプが回るようにアクリル酸がこびりついた軸受を3時間かけてそのつど交換していたが、ヘタしたら30秒でまた故障する。「まるでイタチごっこ。機械的に問題はないし、製造課に確認しても条件的には問題ない。これ以上現場に迷惑はかけたくないし、原因を追求したい。本腰をいれて取り組むことにしました」。改善できないことへの悔しさと苦しみが、上笹貫の闘志に火をつけた。
いろんな角度から調査を続け、機械的には問題がないと判断。そこでアクリル酸とはどういう物質なのか、立ち返って調べてみた。「温度管理が重要だとわかったけれど、適切な温度範囲から外れていた。高い熱が発生すると重合して、その塊が軸受に噛み込んでいたんです。また、他社で起きた爆発事故を調べたら、酸素濃度が問題になっていた。そこで、温度と酸素濃度の観点から見直しました」。さらに検証をするべく、アクリル酸の仕入れ先の工場へ見学を申し入れ、自分たちの状況と比較した。そこでも明るみになったのが、酸素濃度。濃度管理に関してまで、細かいところまで意識はできていませんでした」。
原因を突き止め、温度調整と濃度管理ができる設備を検討。また、それまで手動で管理していたバルブの自動化も実現させた。「実は、温度も酸素濃度も自動化管理も、機械の領分ではなく計装の範囲。計装担当者に設備改造の案をお願いして、製造課へ提案しました」。
自分の領域を越えてでも実現させたいという上笹貫の想いは見事叶い、故障はストップ。結果として年間2000万円の損失を防ぐことになった。この功績は、社内の報奨制度で受賞というかたちで評価された。
「故障がなくてあたり前という前提があるので、保全の部署は評価の対象になりにくい。でもやったことを認めてもらえたのは嬉しかったです」
あんなに悩まされたポンプに、もう1年以上触っていない。

周りを説得させる信頼材料は自らつくる

設備改善の検討をする際、上笹貫が意識していることがある。「機器が本当に使えなくなってから検討するのでは遅い。慌てて取り替えるのではなく、兆候を掴んだら先に先手を打つ。そうすると更新のときに改善できます」。早め早めに検討した案を実現させるには、上司をはじめ他の部署にも承認されなければならない。それには、データに基づいた資料作りが必須だ。「『設備の材料をこれに変えた方が、高いけどいい材料だから長くもちます』と言っても、実績がないと説得力がない。なので、テストピースと呼ばれる試験機器で1年ほど経過を見てデータを集める。そうやってデータの信頼性をとっています」。
人を説得させるには、それ相応の資料が欠かせない。上笹貫は、学生時代のレポート書きがいい修行になるという。「誰にどう伝えたいかを意識して書くのが重要。その意識は社会に出たら武器になるはずです」。人を説得させる材料があれば、自信にもなる。そして、自分の思いがより実現に近づいていく。