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食塩水を電気分解し、苛性ソーダと塩素を生産する「イオン交換膜法食塩電解プロセス」。旭化成はこの分野の膜技術で50年の歴史を誇る。
塩素・苛性ソーダを製造する電解プラント向けに、電解槽とイオン交換膜を世界中の顧客へ提供してきたからこそ、運転状況や設備特性を深く理解している。その強みを活かし、製品供給にとどまらず運転データの解析や保全にまで踏み込むことで、プラントの安定稼働を“仕組み”で支える新たな価値創出に挑む。理想を描きつつ、現場の声で磨き上げながら、“モノ”を起点に“コト”を重ねる変革のあゆみ。
※旭化成は苛性ソーダと塩素という基礎化学品の生産に必要なプラントを製造している。
K.S.
O.K.
S.T.
N.T.
E.Y.
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殺菌剤や漂白剤、塩化ビニール樹脂やウレタン樹脂、合成ゴムなどの製造に利用される塩素。紙やパルプの製造、石鹸や洗剤、非鉄金属、電子製品、医薬品などの製造や、水処理に利用される苛性ソーダ。どちらも、現代社会になくてはならない基礎化学品である。
1975年以来、イオン交換膜法食塩電解プロセスの提供によってこれらの生産を支えている旭化成。電解槽とイオン交換膜、電極、セル、その後のメンテナンスやテクニカルサポートまでをワンストップで提供できる、世界で類を見ない企業だ。またこのプロセスは、水銀やアスベストなどの有害物質を使わず、電力消費も抑えられる技術として、環境負荷の低減にもつながっている。
しかし、人々の生活に欠かせない基礎化学品である苛性ソーダと塩素の生産を今後も支え続けるためには、克服すべき課題もあった。その一つがプロセスの安定稼働である。
この課題解決のために打ち出した一手が、電解分野におけるモニタリングシステムと高度な解析ソフトウェアを提供しているカナダのRecherche 2000社(以下、R2社)の買収である。
これを機に、電解プラント設備の販売を中心としたビジネスモデルから、設備に加えてソフトウェアや解析サービスを組み合わせ、継続的に運転を支援する定額型サービスへと舵を切る構想が動き出した。設備を販売して終わるのではない。設備の安定稼働や保全の高度化に向けたデータ収集・分析までを含めて支援し、顧客課題の解決に伴走することを目指した。
「ところが、お客さまの反応はいまひとつ。『コンセプトはいいが、現場の実情に合わない』という反応ばかりでした」と振り返るのは、このプロジェクトのリーダーを務めたK.S.である。
理想と現実のギャップに直面したが、逆風にこそ力を発揮するのがK.S.の持ち味。当初の構想に固執するのではなく、顧客に受け入れられる形へと柔軟につくり替える決断を下した。
02
K.S.が描き直した戦略はこうだ。
いきなり包括的なサービス化を目指すのではなく、まずは既存の製品提供を軸に据えながら、データ解析を活用した付加価値を段階的に重ねていく。
ここで旭化成とR2社の橋渡し役を担ったのがO.K.だった。
「モニタリング企業は世界中に多くありますが、R2社のように電解専門でデータサイエンスの知見を活かしてソフトウェアで詳細な分析ができる企業はほとんどありません。R2社のこの強みを交換膜事業で最大限に活かすべく、サービスやアプリケーションを形にしていきました」(O.K.)
一方、S.T.は実際にプラントを運転している現場の顧客にヒアリングを開始。「トラブル検知システムはいらない。ボタン1つで安定生産できれば十分」という率直な声も多かった。それでもS.T.は「モニタリングやデータ分析を旭化成で一元管理することで、お客さまのさらなる安定運転を実現すべきである」と、プロジェクトチームに伝えた。
顧客の声に真摯に向き合うことは重要だ。だが、要望に寄り添うあまり提案の価値まで小さくしてしまっては本末転倒である。柔軟に形や方法は変えながら、目指す方向性はぶらさない。そこにはチームの共通の思いがあった。
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世界中の顧客にヒアリングと提案を重ねる中で、壁になったのは「価値を端的に伝える」ことだった。ときには、顧客にサービスの価値を5分、10分で説明しなければならない。だからこそK.S.は、電解セル・電極・イオン交換膜の開発製造から、プロセス設計、テクニカルサポート、モニタリングやデータ解析に至るまでを一気通貫で担う提供体制へと再定義し、それを“伝わる形”にするため事業ブランドとして打ち出した。それが『AlkaNexus(アルカネクサス)』(※)である。
「Chlor-Alkaliの“Alkali”をコンパクトにした『Alka』と、つながりの意である『Nexus』を組み合わせ、事業ブランド名『AlkaNexus(アルカネクサス)』を考案しました」(K.S.)
プロジェクトチームが目指す世界観を顧客にわかりやすく伝え、理解を得るための作戦である。
もちろん理解を得たとしても、すぐに導入につながるとは限らない。イオン交換膜・電極の交換時期やタイミングは決まっており、『AlkaNexus』のコンセプトを採用しなくても、苛性ソーダと塩素の生産自体は継続できるからだ。
この壁を乗り越えるためにN.T.が繰り出したのが、すでに『AlkaNexus』の考え方のもとでソリューションを活用している顧客のもとへ、検討中の顧客を招待するという“ツアー”であった。
「新しいことに対して慎重なのが化学業界。すでに採用しているお客さまの声が大きな安心材料になり、新たなサービス導入に向けて背中を押してくれると考えました」(N.T.)
ツアーは約1年間にわたって行われ、前向きに検討する顧客は徐々に増えていった。
「“理解”だけでは不十分で、“実感”していただく必要がある」と考えて実行した、N.T.の作戦勝ちであった。メリットへの理解と体験の両面から価値を伝えたことで、『AlkaNexus』という事業の構想は、“理想”から“現場で生きる現実”へと近づいていった。
※『AlkaNexus(アルカネクサス)』とは
従来から一貫して提供してきた電解セル、電極、イオン交換膜、プロセス設計、テクニカルサポートに加え、モニタリング技術やデータ解析、新たなソフトウェア・サービスを商品ラインに追加。それらを組み合わせることで、顧客課題に合わせた最適なソリューションを提案できる体制を構築。そしてこの新たな事業の形を「AlkaNexus」というブランドとして打ち出したもの。
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旭化成の交換膜は、現在世界30カ国170以上の電解プラントで採用されている。
「インドやヨーロッパのお客さまを訪問すると、旭化成の従業員は大歓迎されます。イベントでも、関係者の方々が真っ先に声をかけてくださいます。皆さんの笑顔を見ていると、先輩方が築いてきた“旭化成への信頼”の大きさを体感します」(N.T.)
そこにあるのは、50年にわたって築いてきた信頼。その確かな関係があるから、『AlkaNexus』の実現へ勇気をもって舵を切ることができたと、プロジェクトメンバーは考えている。
「モニタリングとデータ解析の導入拡大によって世界中のプラントのデータが私たち技術開発側にも共有されるようになれば、交換膜や電極、電解槽などの開発力をさらに高めていくことができるでしょう。また、お客さまのデータを見ることで、これまで以上にお客さま視点での開発や柔軟な対応に取り組んでいけると感じています」(E.Y.)
先輩方が築いてきた顧客との信頼が、『AlkaNexus』によってさらに揺るぎないものへと育っていくことは間違いない。
今後の『AlkaNexus』について、K.S.は次のように語る。
「まずは『AlkaNexus』による新たな一体型ソリューションを拡大することで、お客さまのビジネスの成功にさらに貢献していきます。将来は、カーボンニュートラルや貴金属資源の有効活用といった課題の解決にも挑戦していきたいと考えています」
次の50年に向けて、新たな挑戦はもう始まっている。