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ヘーベルハウスの外壁や床材などに採用されているヘーベル板は、耐久性・防火性・断熱性・遮音性に優れた高機能建材である。製造しているのは、旭化成建材株式会社の境工場(茨城県)。実はここでは“粉塵”との長年にわたる闘いが繰り広げられてきた。原動力となったのは「よりよい職場を」という、ひたすらシンプルでピュアな思い。目指したのは、粉塵濃度を維持管理できる、より快適で人にやさしい職場環境だった。
O.R.
S.M.
K.K.
I.K.
I.R.
01
「こんなに粉が舞う工程もあるのか…」
2016年入社のO.R.は、境工場に配属されて初めてこの職場に足を踏み入れたときの印象を、今も鮮明に覚えている。当時から防塵マスクやゴーグルの着用、換気設備の稼働など、安全に作業するためのルールと管理は徹底されていたが、数メートル先が白くかすむほどの粉塵が発生する光景は想像以上だった。
ここは、ヘーベル板の製造工程で出た端材を粉砕し、原料としてリサイクルする乾式工場。粉塵の原因は、端材の粉砕によって生じた細かな粉である。2004年の建設以来、日々の清掃や設備保全によって操業は安定していたものの、長年の運転の中で発生した粉が建屋内に残り、作業のたびに舞い上がる状況が続いていた。
もちろんこれまでも改善には取り組んできた。一定の成果は上がったものの、完全な解決には至っておらず、半ば諦め気味に現状を受け入れていた。
そんな状況が、数年後に一変する。O.R.は、現場を見ているうちにこう感じるようになった。「もっと快適にできるのではないか」やがて後輩を迎える立場になったとき、その思いはよりはっきりとした。
後輩を受け入れる立場となったO.R.は、後輩たちが粉塵問題について話すのを耳にする中で、「慣れているから問題ない」と割り切るのではなく、「次の世代がより働きやすい状態をつくりたい」と考えるようになっていった。
「これから入社する後輩たちに、より気持ちよく働ける環境を用意したい」
心に湧き上がったのはそんな強い使命感。O.R.は仲間とともに作業環境改善プロジェクトの立ち上げを決意した。2022年のことだった。
02
O.R.が立ち上げた改善プロジェクトに対しては、賛否の声が上がった。誰だって自分の職場は快適なものにしたいに決まっている。だが「できることは全部やった」「仕事が増えるのはちょっと…」という懐疑的な声も多かったのである。
そんな中、1人のベテランが立ち上がった。S.M.である。
「“未来の後輩たちのために”というO.R.くんの情熱に打たれ、全力で環境改善に取り組みたいと思ったんです」(S.M.)
プロジェクトでは、目標を「マスクがいらない職場」と定めた。粉塵濃度0.1mg/m³以下を継続し、防塵マスクを常時必要としないレベルの環境をつくる、それがゴールだった。2階は約半減、3階は約12分の1まで下げるという、途方もない道のりである。
この目標に向けてプロジェクトでは、まず人海戦術で清掃に取り組んだ。
床から機器のすみ、天井まで、建屋じゅうを徹底的に掃いた。きれいにしても数日で元通り。掃除を繰り返し、2カ月ほどで職場は目に見えて美しくなったのである。
「何度も同じ箇所を掃除するのは本当に辛かったですが、常に掃除の先頭に立つO.R.くんの姿を見ていると、自分たちも頑張らなきゃと思いました」
建屋2階のエリアリーダーであるK.K.はそう振り返る。
しかし、見た目が変わっても問題は終わらなかった。粉塵濃度を測定すると、減少はわずか2割程度。堆積を取り除くだけでは足りない。発生源そのものを抑えなければ、目標には届かない。清掃による改善には限界があり、次は“発生そのものを減らす”段階へと進んだ。
「ようやくスタート地点に立ったようなものだな」。
苦笑しながらも気を取り直したメンバーたちは、粉塵発生源の調査を行った。発生源調査の結果、原因はボルトの緩み、搬送設備と粉砕機周辺の粉漏れと、大きく3つに絞られた。1,000個を超えるボルトを点検して締め直し、漏れ箇所は徹底的に補強した結果、粉塵濃度はさらに半減。地道な積み重ねが大きな効果を生むことができた。
だが、マスクがいらない職場には、まだほど遠い。かといって、他に打つ手も思い浮かばない。確かな改善を実感しつつも、目標の高さゆえに模索が続いた。
03
順調に階段を上りつつも、踊り場に差しかかったようなもどかしさのさなかにあったある日、ベテランのI.K.が何げなく漏らした一言がブレークスルーのきっかけとなった。
「もう、全部の隙間を塞いじゃえばいいじゃん」。
清掃後の調査では粉塵の発生が確認されなかった箇所がいくつもある。確かにそこは何の対応もしていなかった。
I.K.の言葉に突き動かされたように、メンバーはすぐに行動に移す。まずはテストだ。最も端材の粉砕量が多い工程を対象に、試験的に隙間を塞いでみた。すると確かに粉塵濃度がさらに減少したのである。
「これだ!」
メンバーはこの工程の周辺も含めて、もれなくシートを貼って隙間を塞いだ。これによってさらに6割の粉塵削減を実現できた。日々の気づきをもとに、対策をその場で試行錯誤しながら実行に移す機動力が、改善を加速させた。
次のステップへ踏み出した、大きな一歩だった。だが、まだ目標には達していない。メンバーはさらに原因を突き止めるべく活動を続けた。
そんなある日のこと。O.R.は、小さな違和感に気づいた。ヘッドライトをつけて建屋内の点検をしていると、粉塵がヘッドライトに照らされキラキラと舞っている。目を向けると、一定の方向に向かって流れているではないか。昼には気づかなかった現象だ。
粉塵の行方を追ったO.R.は、壁の隙間から風が侵入し、換気扇に向かって流れていることを発見した。行き詰まるたびに現場へ足を運び、自分の目で確かめることを大切にしていたO.R.だからこそ、たぐり寄せることのできた偶然だった。
O.R.はすぐにメンバーに報告。ただちに壁の隙間を塞ぐ対策が取られた。そして粉塵計測を行うと、粉塵濃度はなんと95%も削減されたことがわかったのである。
こうした対策をマニュアル化し、必要な治具なども整えたことで、改善は一過性ではなく、誰もが再現できる日常として定着した。O.R.の目指した「マスクがいらない職場」を、遂に実現できたのである。この取り組みは、「旭化成グループ小集団活動成果発表全国大会」で最優秀賞を受賞した。
04
O.R.は振り返る。
「より安心して働ける職場を、未来の後輩たちに残したい。その思いが、苦しい状況を乗り越える原動力となりました」。
その言葉を受けて、若手のI.R.が語る。
「チーム全員でアイデアを出し合い、トライ&エラーで課題を解決していった経験は、私にとって大きな財産になりました。今後は自分たち若手が主体となって、日々の業務の中から改善の種を見つけ、さらなる改善に挑戦していくつもりです」
かつてO.R.は、職場で多くの先輩方が課題解決に取り組む姿を間近で見てきた。その姿勢へのリスペクト、そして自分もそんな人財になりたいとの思いが、プロジェクトをリードするO.R.の背中を押してきた。今回の取り組みは、そのバトンが次の世代へと手渡された瞬間でもあった。
現場・現物・現実の3つの“現”を重視し、課題解決や意思決定に結びつけていくことを三現主義という。机上ではなく、現地で見て、触れて、確かめる。その積み重ねが確かな改善につながっていく。このプロジェクトは、そうしたことを教えてくれる。そして何よりも、“人”から“人”へと受け継がれていく想いが原動力になり、“人”に学ぶことの大切さに気づかせてくれるのだ。