未来をつくる人 高度専門職に任命されたプロ中のプロたち
清水 啓友

2023年度就任
医薬研究センター 安全性・動態研究部
動態研究グループ
清水 啓友
エキスパート
研究開発領域(M&Sを活用した医薬品開発)

Shimizu Hirotomo

最新のモデリング&シミュレーションで
創薬成功の新たな原動力になりたい。

清水さんの
経歴と専門性

入社後、タンパク、ペプチド製剤の非臨床薬物動態を担当し、現在上市されている種々医薬品の開発研究に貢献してきた。その後移った薬理研究部では、低分子化合物の血中薬物濃度 (PK)と薬効 (PD)の関係を明らかにし、PK/PD解析の活用を研究センターで推進した。現在、安全性・動態研究部に所属し、薬物が体内に吸収されて薬効を発揮する一連の生体内現象を定量的に解析し、ヒト有効用量予測などに取り組んでいる。一例として複雑な定量的システム薬理学 (QSP) モデルを適切に修正・応用しながら解析業務に活用するなど、新しい解析にも積極的に挑戦してきた。これらの取り組みにより、社内プロジェクトでの成果を通じて、モデリング&シミュレーション(M&S)分野での継続的な貢献や挑戦する姿勢が評価され、社内エキスパートに認定された。

安全性と薬効の証明、開発効率の向上、
今やM&Sは創薬の重要な場面を担う。

大学の研究室ではM&Sとは無縁でしたが、NMRを用いた計算科学には触れていました。入社後、体内の複雑な反応過程を単純化して数式化するM&Sの世界に興味を覚え、PK/PD解析の専門性を深めてきました。基本的に数式を駆使して試験結果を解析するのが好きなのだと思います。薬理研究部にいた時、臨床統計専門家育成コースで勉強した際も、数式を扱う統計解析を楽しんでいました。
私が高度専門職のエキスパートに認定された理由の一つは、開発最終段階に近いあるプロジェクトにおいて、非臨床と臨床の両面で開発を大きく前進させたQSPモデルを担ったことです。これは、薬物動態・薬理・臨床統計の専門性を総動員し、また、他研究部メンバーとの共感の渦ができて、全員が巻き込まれながら良い方向に向かって行った結果だと思っています。
ICH(医薬品規制調和国際会議)がMIDD(Model Informed Drug Development)のガイドライン制定を進めている中、M&Sは医薬品開発の効率を高め、Attrition Rate(脱落率)を下げるキーテクノロジーの一つです。今後も、自分の役割としてM&Sを積極的に推進していきます。

Prifle

私のプロフィール
 
1989年
旭化成に新卒入社。
薬物代謝研究所にて、測定系構築から動物での血中濃度測定まで、一連の試験を経験。この時のPK解析からM&Sに興味を覚えた。
2000年
薬理研究所に異動。
動物疾患モデルでの薬効評価を終えた翌日に、PK用に投与採血する対応なども実施して、PK/PD解析を積極的に進め、啓蒙した。
2013年
安全性動態研究部に異動。
PK/PD解析に加え、パラメータが数多くあり複雑なM&SであるQSPモデルも手がける。
2023年
QSPモデルによる医薬品開発への貢献や、PK/PD解析による開発化合物導出成功への寄与が評価され、社内プロジェクトでの成果を通じてエキスパートに認定される。

「こんな解析ができないか…」
その想いがスキル獲得を前進させた。  

これまで、私がM&Sのスキルを磨いてこられた理由の一つは、M&Sの成果を喜んでもらえる他部署のメンバーがいたからだと思います。それがモチベーションとなり「こんな解析ができないか?」という事に応えるため、各種M&Sの解析ソフトのスクリプトを自ら作成し、試行錯誤を繰り返しながら、地道にスキルを高めてきました。もう一つの理由は、サイエンスとして課題解決の最適解を提供できうるM&Sに挑戦したいという気持ちが原動力となりました。今では当たり前の解析ですが、20数年前、各種骨格構造を持つ低分子化合物群について、血中濃度と薬効の関係を調べて、有望な骨格構造を明示したのは、初めての試みだったと思います。その後は、臨床データを用いたロジスティック回帰や間接反応モデルによるPK/PD解析、QSPモデル解析も、社内で初めて取り組みました。また、臨床試験に進んだ低分子化合物、タンパク製剤のヒト臨床有効用量予測も手掛けてきました。振り返ると、成果を他のメンバーと共感したいという思いと、新しい挑戦への意欲というシンプルな原動力が、M&Sのスキル向上につながったと感じています。

次々に顕在化するミッション。
エキスパート認定で意欲は高まるばかり。

M&Sを医薬品開発に有効活用するためには、TR (Translational Research) を適切に進めることが肝要です。TRとは、基礎研究の成果を臨床に橋渡しする一連の研究であり、Proof of Concept取得の確度向上を目指します。TRでは、M&Sの他、バイオインフォマティクスや疾患メカニズムの理解、パスウェイを考慮したPDマーカー探索など、多岐にわたる分野の専門家が必要です。このような専門家集団を生み出すためにも、高度専門職制度はとても有効だと思います。
今後、多様なモダリティや疾患メカニズムに対応して、戦略的なTRを医薬品開発初期から進めるために、多岐にわたる分野の専門家と議論し、理解し、連携させて行く中で、M&Sを進めていきたいと考えています。また、M&Sの担い手を増やして、その中からTRをリードできる研究者を育てることで、旭化成ファーマの創薬力向上にいっそう貢献できることを確信しています。