未来をつくる人 高度専門職に任命されたプロ中のプロたち
家村 修一 薬事・信頼性保証センター 品質保証部 監査管理グループ
エキスパート

2022年度就任
薬事・信頼性保証センター 品質保証部
監査管理グループ
家村 修一
エキスパート
薬事信頼性保証領域(GQP/GMP)

Shuichi Iemura

「いつでも一定品質の製品」を供給し続けるために、
製造所監査業務の高度化を推進しています。 

家村さんの
経歴と専門性

旭化成ファーマが販売する医薬品やその原薬・原料等を製造する製造所の管理業務を行う品質保証部。GMP(医薬品の製造管理の基準)省令や製造販売承認書に基づいた製造手順や、品質管理手法を遵守しているかどうかを、GQP(医薬品の品質管理の基準)省令に従って監視・監督するのが主要なミッションになる。旭化成ファーマ独自の製造所の評価結果やリスク評価に基づく頻度で品質保証部の有資格者が製造所を訪問し、品質システム及び製造工程全般の監査を行う。もし、この監査の精度が低下した場合には、製造所があらかじめ決められた製造方法や品質管理方法を遵守せずに、異なる方法で出荷していたとしても、その状況に気づかずに見逃す機会が増えることとなり、結果として旭化成ファーマの信用はもとより、患者さんに深刻な影響をもたらしかねない。
このように製造所の監査業務は、品質保証部の業務の中でも極めて重要な職務であるが、家村さんが高度専門職制度でエキスパートに任命されたのは、この監査業務をより高度化させる取り組みを重ね、製造所の課題解決の支援も行い、さらにそこで得た知見を部門全体に展開していくなど、数々の功績を残してきたからである。

世界中の製造所を駆け回り、
旭化成ファーマ製品の品質維持に関与する。 

大学で分子生物学を専攻した私は、食品の品質管理に大きな関心を持っていたことから、食品業界をターゲットに就職活動をしておりました。その結果大手飲料メーカーから内定を頂き、新卒入社しました。しかしながら、入社後の辞令では食品部門ではなく、医薬品部門への配属が言い渡され、静岡県に位置する医薬品製造所に勤務することとなりました。
当該製造所では、医薬品製剤及び原薬の品質管理・品質保証に携わり、製薬業界に身を置く一人として業務に邁進しました。その後、社内の異動により東京本社の生産管理・物流統括業務に携わり、製造所で製造された製品だけではなく、製品の製造に必要な原料や資材の確保に尽力しました。これらの業務を経験したことで、市場へ製品を出すことに責任を持つ製造販売業者の業務に興味を持つようになりました。
旭化成ファーマへ入社後は製造販売業者の品質保証部門でキャリアを重ねてきました。旭化成ファーマが扱う処方箋医薬品は、薬局やドラッグストアで購入できる医薬品とは異なり、使用する患者さんが自ら選ぶことはできません。そのため目的とする疾患に確実に作用することに加え、数ある工業製品の中でも徹底した品質の恒常性が求められることから、厳格な製造管理・品質管理の実行が必須です。決められたこと・モノから「何も足さない、何も引かない」。品質保証部では、この「厳格な製造管理・品質管理の実行」の状況を確認すべく、自社工場を含めた製造所の監査を行い、旭化成ファーマとして求める品質の製品を適正に製造しているかをチェックしています。対象となる製造所は日本国内だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国、インドなど世界中に点在し、トータルで53ヶ所。私を含む11名の監査員が定期的に足を運びます。
監査では、医薬品製造販売承認書、GMP省令に代表する各種規制やガイドライン、製造所との品質取決め事項への遵守状況の確認に加え、製造現場の管理状況を確認します。

Prifle

私のプロフィール
2005年
新卒で大手飲料メーカー(医薬製造職として)に入社。
 
2012年
旭化成ファーマ入社。品質保証部に配属。
2022年
異常逸脱が多発していた製造所委託先の改善プロジェクトの成果が評価され、社長賞を獲得。
2022年
エキスパートに任命。
2023年
高度な知識とスキルを持つ監査員確保のための新たな評価方法の確立と監査員資格認定制度の刷新を主導。

監査で現状を疑う視点を持つ必要はあるが、
本質は製造所に気づきを促し、協業の成功を引き出す点にある。

監査は、医薬品の製造管理・品質管理に関する法規制だけではなく、実際の製造所での運用が容易にイメージでき、かつ現場の実態への理解が必要であることから、新入社員はもちろん経験の浅い社員が監査を通して製造所に十分なアウトプットを残すことは困難です。定められたチェック項目だけを確認すれば良い訳ではなく、監査の対象となる品目の製造プロセスや製造手順、守るべき取決め事項を自身にインプットし、製造所とのコミュニケーションを通して、表在化せずに逸れている状況がないかを察知する洞察力が求められるからです。例えば、資材や装置の不適切な配置を見て製造工程でミスが生じやすいのではないか、手順書に記載の内容と説明者の説明内容に食い違いが出た場合は適切な教育訓練がなされていない可能性がありそう、複数の時計が示している時間が一致していないのを見て時間管理への意識が低いことからくる記録の取り方への影響はないか、といった予見をリスク管理の視点で行い、製造所に対応を要求していくことになります。
しかしながら、重箱の隅をつつくだけのような監査では製造所にポジティブな改善意欲を引き出すことはできず、また製造所側の成長に繋がりません。製薬業界で共に切磋琢磨する存在として、製造所の現状をきちんと理解することが大前提です。その上で、より強固な品質保証のために必要と考えられることを、製造所と議論することによって製造所側の気付きを刺激し、双方に大きなメリットのある場にすることも監査で求められる重要な目的の一つです。品質保証部の監査員は、製造所から煙たがられがちな存在ですが、我々は製造所で製造された製品の品質に「お墨付き」を与えるとともに、これからも継続して品質を維持した製品をお客様へ届けるために取り組むことを一緒に考えていくパートナーであるべきなのです。
過去に、私が担当する国内製造所のひとつで、製造上の異常逸脱が頻発していました。その中には製品廃棄や大幅な収率低下を引き起こし、製品供給上の不安を引き起こす案件もありました。その状況を何とか改善できないかを考え、当該製造所を巻き込んだ改善活動を行ったことがあります。当該製造所でなぜ異常逸脱が頻発するのか、その原因を深堀し、その最たる原因を解決するために必要なアクションを、製造所と共に考えました。その際、製造所スタッフに対して、製造管理・品質管理を正しく理解し実行に移すマインドを再度醸成し、具体的なアクションを起こして頂き、一定期間後の評価を行いました。それが奏功し、異常逸脱の発生件数は大幅に改善。製造所からは感謝され、社内では社長賞を獲得。高度専門職の拝命にもつながったと考えています。

品質保証部門全体の底上げを目指し、
部内全員のスキルアップ施策に取り組む。  

私のエキスパート任命による最も重要なミッションの一つとしては、製造所監査業務の高度化があります。この職務には医薬品の製造管理・品質管理に関する広範囲な知見や製造所との間で信頼関係を築くコミュニケーション力が求められますが、最も身につけるべきなのは監査中に感じる僅かな違和感から製造所の問題点・課題を素早く察知する洞察力です。この洞察力は、マニュアルで指導できるものではなく、言語化の難しい暗黙知を伝授するような難しさがあります。また、このスキルは法規制をただ読んでいるだけは身につかず、実際に製造所の監査を多数経験してこそ養われるものですが、弊部の個々の監査員がどの程度このスキルを持っているのかは、これまで見える化されておらず不透明でした。
そこで私は、このスキルを見える化し、個々の監査員の成長に必要な課題を明確にするための新たな取組みとして、外部コンサルタントとともに「バーチャル製造所の模擬監査プログラム」を実行しました。このプログラムは、実際の製造所監査と同様に現場ツアーと書面監査をロールプレイング形式で実施し、自身が持つスキルのアウトプットを社外の有識者に評価してもらう形にデザインしました。さらに、模擬監査でのアウトプットに加えて、完了後に作成する監査報告書の完成度に対しても評価することとし、「問題箇所の検出力」や「コミュニケーション力」、「レポート力」などのスキルを5角形のレーダーチャートで表示するようにしました。被験者である監査員たちの力量が見える化されることで個々がウィークポイントを自覚し、その克服による成長を図ったのです。
当該プログラムで得た評価を基に、今年度の実際の監査では自身が何に気を付けて監査をするのか、それを実現するために何をするのかを各監査員に課題として考えてもらい、監査員のレベルアップに必要な課題を継続的に引き出していく、このサイクルを今後の監査員評価の基本軸として、継続的に運用する予定です。このプログラムは以前から実現したいと強く想っていた構想であり、高度専門職として取り組むべき課題設定に合致していたことから、自身の納得の行く形で実現できると確信が得られるまで、およそ1年間外部コンサルタントと内容を協議・調整しました。結果として、その想いを形にすることができ、大きな達成感を得たと同時に、高度専門職としての価値を会社に提供できたと実感しました。品質保証部内でこの一連の取り組みを主導する際に、私が高度専門職であることはメンバーの牽引に大きく役立っています。自分の中に大きな意思をもって実現したい取り組みを抱えている方は、高度専門職制度を有効に活用することで、その実現の大きな一歩になると考えます。